東京高等裁判所 平成9年(行コ)124号 判決 1998年4月27日
東京都新宿区四谷四丁目二八番二〇号
パレ・エラルネル九〇四
控訴人
武節子
右訴訟代理人弁護士
宮﨑敦彦
東京都新宿区三栄町二四番地
被控訴人
四谷税務署長 網野隆一
右指定代理人
松原行宏
尾辻七郎
神谷信重
三井広樹
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が控訴人に対し平成四年三月一三日付けでした次の各課税処分を取り消す。
(1) 控訴人の昭和六三年分の所得税に係る更正のうち、総所得金額四七五六万六六五一円及び納付すべき税額一七四三万七四〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定
(2) 控訴人の平成元年分の所得税に係る更正のうち、総所得金額四三七五万九二九〇円及び納付すべき税額一五九五万一八〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定
(3) 控訴人の平成二年分の所得税に係る更正のうち、総所得金額五五三〇万三二七一円及び納付すべき税額二一六五万九九〇〇円を超える部分並びに過少申告加算税賦課決定
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨
第二事案の概要
原判決の「事実及び理由」欄の第二に記載されたとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決四頁五行目から六行目にかけての「その金額の計算上」を「同国法人に」に改め、同五頁八行目の「各所得金額の」を削除する。)。
第三争点及びこれに関する当事者の主張
次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第三の一、二記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二五頁五行目末尾の次に、次のとおり付加する。
「また、控訴人がコデラカンパニーの法人格を否認すべき理由として主張する社員総会や役員会の不開催や店舗以外に事務所等の施設がないことや、詳細な営業報告書等が出資者たる控訴人の要求で作成され、送付されている事実は、わが国における小規模会社で往々にして見受ける事実であって、コデラカンパニーが法人としての実体を有することとなんら矛盾するものではなく、その法人格を否認すべきことを示す徴表とは到底認められない。」
2 同二八頁一行目の末尾に「控訴人は、前記のとおり、レストランフジに対し返済時期や利息支払いの定めもなく、その社員持分の価額(七万五〇〇〇フランすなわち約一六五万円)をはるかに超える金額の送金をしていること」を、同六行目末尾の次に「なお、控訴人のレストランフジの経営に対する関与が継続しなかったのは、小泉らが控訴人を裏切り独断で同店を運営するようになったからであるにすぎない。」をそれぞれ加える。
3 同二八頁六行目末尾の次に、行を改めて、次のとおり加える。
「(三) コデラカンパニーは当初より法人としての実体を全く有しておらず、単に控訴人がモナコにおけるレストラン事業を行うために形式的に設立されたペーパーカンパニーにすぎないもので、その法人格は形骸化している。このことは、同会社においては設立以来社員総会も役員会も開催されたことがなく、店舗であるレストランフジ以外に事務所等の施設は何も有していないこと、営業日報にしても決算書にしても、控訴人の要求のもとに作成され、控訴人のもとで保管されているものしかないことからも明らかである。」
第三当裁判所の判断
当裁判所も、本件各更正処分及びこれを前提とする本件各賦課決定に控訴人主張の違法はないものと判断する。その理由は、次のとおり補正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第四に説示されたところと同一であるから、これを引用する。
1 原判決三五頁三行目の「同額」を「ほぼ同額」に改め、同三七頁八行目の「性質が」の次に「右法人に対する」を、同末行の「証拠」の次に「及び甲第一六号証の一ないし一七一、第二一ないし二五号証の各一、二」をそれぞれ加える。
2 同三八頁六行目の「ラ支払」を「支払」に、同四〇頁七行目の「右資金提供自体をもって料理店業であるとは認識していない」を「右資金提供を会社に対する出資として認識している」にそれぞれ改める。
3 同四二頁六行目の「いうべきである。」の次に「控訴人は、コデラカンパニーの社員総会や役員会が開かれたことがないことや、同会社が店舗以外に事務所等の施設を有しないことをもって、同会社の法人格が形骸化していることを示す事実であると主張するが、仮にそのような事実があるとしても、これをもって直ちに同会社が単なる形骸にすぎないものということはできない。また、レストランフジの営業日報や決算書が控訴人に送られていることは認められるが(甲第一六号証の一ないし一七一、甲第二一ないし二五号証の各一、二)、このような経理関係の書類が控訴人のもとにしか保管されていないことを認めるに足りる証拠はない。結局、控訴人の法人格形骸化の主張は採用することができない。」を加える。
以上によれば、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 加茂紀久男 裁判官 廣田民生 裁判官三村晶子は、転任のため署名押印することができない。裁判長裁判官 加茂紀久男)